省エネレポート
10人動けば10の節電が可能!
九州電気保安協会では、省エネに取り組む企業や施設をサポートしています。今回ご紹介するのは、磁器陶土の精製や機能性陶土の開発を行う有限会社淵野陶土さま。省エネの取り組みについて、代表取締役の渕野和弘さんに伺いました。
- 有限会社淵野陶土 さま 佐賀県嬉野市塩田町大草野丙1880
- 1926年創業。2015年に陶都肥前ものづくり協同組合を設立。2018年に「フチノ・ポーセリン」で磁器の生産を開始。陶土製造から焼成までの一貫体制を構築し、多様なものづくりに対応。
電気を管理する発想
当社は有田焼の主原料である天草陶石を用いた天然の磁器陶土を精製して、肥前地区の窯業事業者に供給しています。その陶土製造設備には陶石を砕くスタンパー(粉砕機)をはじめ集塵機、土練機などがあり、大きな電力を必要としています。
節電のきっかけは電気料金の仕組みを知ったことでした。30分単位の中でデマンド値を超えると電気料金が上がる。機械が毎日稼働していなくても1年間の契約電力が跳ね上がるのです。これをなんとかしたいと保安協会に相談したところ、電気を監視できるECOねっとシステムを紹介され、導入しました。
機械稼働の組み合わせ
ECOねっとシステムのモニターは事務所に設置。工場には回転灯とスピーカーがあります。警報が鳴ると、当初はとにかく可能な限り機械を停止して使用電力量を下げていました。すると、機械を使用するタイミングを変えるとどうなるか、出荷時に機械を回すときはどの機械を停止するかなどと考えるようになり、より良い稼働の組み合わせが見えてきたのです。それまではそのときの都合で作業をこなす日々でしたが、ECOねっとシステム導入後は電気が見えるようになったため、それに合わせて段取りを決め、効率よく仕事を回せるようになりました。今ではそれを現場で判断してやってくれているので、安心して任せています。
電気炉は夜間運転
当社では磁器陶土の精製の他に、有田製陶所「フチノ・ポーセリン」を運営し、国内でも数少ないボーンチャイナの製造を行っています。生地の量産から表面処理まで各種の機械を使うのですが、大きな電力を使うのが磁器を焼成する電気炉です。これを2基同時に稼働したら契約電力が50kWに上昇。これはたまらないと、この製陶所にもECOねっとシステムを導入しました。他の機械やエアコンを使う昼間は10kWの電気炉を稼働し、20kWの電気炉は夜間運転するようにしています。工場も製陶所も機械をすべてフル稼働すると50kWを超えてしまいますが、このように電気を管理することで契約電力は23kWを維持。警報が鳴ることはほとんどありません。
節電のコツは皆の意識づけ
節電のコツは、私を含めてそこに従事するすべての人が同じ意識を持つことだと思います。ムダな電気を使っているとして、それを1人が消して回ってもせいぜい3しかできないが、皆で不要な電気を消すという意識づけをすると、10人でやれば10できる。一人ひとりの意識づけが大事なのです。今後この業界の景気が良くなり生産量が増えれば、それに伴い電気使用量も比例して増えていきます。しかし、今のうちにこういう節電を習慣づけておけば、電力量が増えても「絞るところは絞る」ということがきちんとできると思います。