
省エネレポート
社会福祉法人明徳会 牧之原むつみ園 さま
細心の注意で館内空調を制御
九州電気保安協会では省エネに取り組む企業や施設の皆さまをサポートしています。
今回ご紹介するのは、特別養護老人ホームを運営する牧之原むつみ園さま。
総務課長・矢野誠さんに、入所者の生活環境を守る節電について語っていただきました。
デマンド監視で節電をめざす
当事業所は特別養護老人ホームならびに短期入所生活介護(ショートステイ)、通所介護(デイサービス)を運営しており、高齢者の生活の場として多くの電力を使用しています。2009年に現在地に移転し、それまでの平屋建てから鉄筋コンクリート3階建てで全室個室の10名単位ユニット型施設にリニューアルしたので、電力量は増えると予想していました。ところが実際には予想以上に電力使用が大きく、節電対策に苦慮していたところ、電気保安協会の担当者からデマンド監視によって節電を実現するECOねっとシステムを紹介され、2011年に導入しました。それまで契約電力が194kWだったので、まずは目標デマンドを145kWに設定して監視スタート。

遠隔操作で無駄な空調を制御
当事業所が立つ牧之原は冬には氷点下の寒さになることもあり、全室個室での空調機は夏よりも冬の寒さに対してフル稼働となります。1日のサイクルの中で「電気の使い過ぎ」アラームが鳴りやすいのは午前9時~11時。この時間帯に入所者と通所介護者の入浴が行われ、2か所の浴室でリフト浴などの機器が稼働。同時に調理場では昼食作りが始まり、調理場系統の空調と調理機器が稼働します。そしてランドリー室でも大型の洗濯・乾燥機が稼働。電気使用が幾重にも重なってしまうのです。総務課に設置しているECOモニターのアラームが鳴ったら、全館の図面を熟知している総務課職員が集中リモコンで遠隔操作して、使用していない空間の空調を切ったり、複数の空調機がある広い空間の空調を間引いたり、事務所や施設長室の空調を切っていきます。

コロナ感染対策でデマンド上昇
しかしながら目標デマンド145kWはハードルが高く、なかなか契約電力を下げることができません。そこで2018年以降は目標デマンドを165kWに設定。翌年には契約電力を154.3kWまで下げることができました。ところが2022年冬に新型コロナウイルスが蔓延。感染対策に追われてデマンドコントロールどころではなく、契約電力が跳ね上がってしまいました。そういう緊急事態を乗り越えた現在、目標デマンド165kWに対して実際の契約電力は165.5kW。ほぼ目標を達成するに至りました。当施設は開所から10年を過ぎ、設備の更新時期になりました。2020年から省エネタイプの空調機への入替工事を4期に分けて行い、2022年には照明をLED化。これらの節電効果を追い風に、もう一度、目標デマンド145kWに挑戦したいと思っています。

職場環境で高まる節電意識
当事業所で最優先すべきことは、入所者の体調管理です。高齢者はちょっとした温度の変化で体調を崩すこともあるので、空調の制御は一概に遠隔操作で管理すればよいということではありません。入所者のそばにいる現場の介護職員の判断を一番に尊重しなければいけません。これが介護施設の節電の難しさです。当事業所では会議や施設内ネットワークを使った申し送りなどで省エネ意識を高めていますが、前提として職員たちが働きやすい環境を作ることが大切。職員一人一人が「ここで働いてよかった」と感じる職場なら、節電への呼びかけに心から応じてくれます。全員で取り組むことは全員のベクトルが同じ方向に向いていないと伝わらないのです。
