
お客さま訪問記
池のおく園 中村美術館 さま
福岡県田川市弓削田関の山3782-1
https://www.ikeno-okuen.com/n_museum/
福岡県田川市はかつて石炭産業で栄えた炭都でした。旧三井鉱山セメント跡地に市民憩いの場として開園した複合文化施設「池のおく園」。その中核施設として2008年に開館したのが中村美術館です。

田川の子どもたちに本物を
筑豊を横断する大動脈・国道201号沿いにある池のおく園。一歩園内に入ると、行き交う車の喧騒とは無縁の静寂で自然豊かな敷地が広がっています。美しい庭園の前に建つのが中村美術館。「落ち着いた環境の中で美術作品をじっくり鑑賞できます」と語るのは、中村美術館の学芸員・宮﨑郁さん。「美術館だけでなく、レストランでの食事や庭の散策を楽しむなど、トータルで五感を満たして一日ゆっくり過ごせる場所です」
中村美術館の経緯について「中村産業の創業家が個人で収集してきたコレクションが基本です」と語るのは中村産業株式会社の常務執行役員・大久保英一さん。中村産業は石炭産業隆盛期に田川市で創業し、現在は池のおく園の運営を含め幅広い分野で中村産業グループを形成して地域社会に貢献しています。「めったに芸術に触れる機会がない田川の子どもたちに本物を観てほしい、という創業者の思いから美術館が誕生したのです」と大久保さんは語ります。

近現代の洋画・日本画を中心に
宮﨑さんに展示室を案内していただきました。第1展示室には梅原龍三郎や熊谷守一をはじめ近現代の日本人作家による洋画。第2展示室には横山大観や東山魁夷などの日本画がそれぞれ17点展示されています。観ながら気づいたのは、一点一点の作家が違うこと。「コレクター美術館だとどうしても好みの作家や年代に偏りがちですが、そうならないよう展示作品は多岐にわたり、多くの作家の作品を一度にご覧いただけます。作家による作風や技法の違いを楽しむことができます」と宮﨑さん。なお第3展示室には屏風や掛軸を展示。絵画だけではありません。第4展示室には人間国宝による陶磁器や端渓硯の数々が展示されています。

ここでしか観られない作品ばかり
展示室以外にも美術品を見ることができます。ロビーにはアール・ヌーヴォー期のガレやドーム兄弟などのガラス工芸作品を多数展示。その一部はロビーや談話室などの照明としても使われています。さらに館内通路などには大型の彫刻作品や有田焼大壺などを配置。もっと言えば、この美術館の建物はかつての三井鉱山セメントの事務所をそのまま改装したもので、美術館自体が昭和の田川の文化をいまに伝える作品と言えます。
「当館では作品の貸し借りは行わず、所蔵する作品のみを展示するので、すべての作品は当館でしか観ることができません」と宮﨑さん。四季ごとに展示作品を入れ替えており、9月から「秋季常設展」を開催中。「来館する方お一人お一人にきっとお好みの作品が見つかるはずです」と語る宮﨑さんに、美術館の電気設備の保安管理についてご意見を伺いました。「定期点検の際に、気になる点などについて直接お尋ねできるので安心です。昨年、落雷で停電になった際もすぐに駆けつけて対応してもらいました」

