お客さま訪問記
岩尾磁器工業株式会社 さま
化学工業を支える磁器の総合オートクチュールメーカー
日本初!化学工業用磁器を開発
江戸享保年間から続く有田の名窯「對山窯」。ここはいまも連綿と伝統工芸美術陶磁器を作っていますが、この對山窯を母体に生まれたのが岩尾磁器工業㈱です。始まりは昭和初期の化学工業勃興期に、有田泉山陶石の耐酸性に着目して耐酸磁器や耐酸煉瓦を開発。当時、耐酸煉瓦は輸入に頼っていて国産品は画期的なものでした。しかも海外のものと比べて耐蝕性・強度・耐熱性いずれも優れていることが評価されました。以来、化学工業用磁器の製造を飛躍的に伸ばし、現在この分野では国内シェア80%以上を占め、さらに海外五十数カ国へ輸出しています。「材料は磁器だけではありません」と語るのは、販売促進部長の古部敏也さん。「セラミックス各種やFRP、金属との複合体による製品も開発しています」
水処理環境装置・触媒担体として
同社の製品は環境分野にも使われています。1950年代より磁器製散気材の開発に取り組み、東京、大阪など各都市上水道の水処理の心臓部となる多孔質セラミックス製散気材を設計・納入。均一な気孔から発生する微細気泡のオゾンが水を浄化し、安全な水道水を守っているのです。同様に下水処理や汚泥処理にも同社の散気板・散気筒が活躍しています。また、蓄熱体・触媒担体として格子状に多数の穴をもつセラミックハニカムも製造。大気汚染の原因となる揮発性有機化合物の最終処理ではセラミックスによる蓄熱燃焼法が近年、急激に普及しています。「当社の化学工業や環境分野の製品は一般社会の目に触れることはない」と古部さん。「そして大量生産することもありません。すべて特注品で一件一件プロジェクト形式で設計・製作する、いわば磁器の総合オートクチュールメーカーなのです」
都市空間にセラミックアート
同社は化学工業用磁器メーカーである一方で、都市空間での壁画や装飾レリーフ、オブジェ、モニュメントなどセラミックアートも制作。空間文化を創造する景観部門として街並みや住空間を演出しています。いま多いのは重要建造物の復元。国宝の迎賓館赤坂離宮や重要文化財である門司港駅の装飾などの復元も手がけています。 「磁器は環境負荷をかけない素材。可能性は無限です。燃料電池セルの製造技術など、水素化社会に向けての開発にも積極的に取り組んでおり、低環境負荷な次世代型エネルギーにも寄与できるセラミックス製品で貢献していきたい」と語る古部さんに、工場の電気設備の保安管理についてご意見を伺いました。「工場では古い設備もあり、更新が追いついていないのですが、九州電気保安協会の保守点検のおかげで安全に電気を使っています」