絶縁低下から発生する停電事故への対応

現場レポート

絶縁低下から発生する停電事故への対応

絶縁低下から発生する
停電事故への対応

九州電気保安協会では、お客さま施設の電気トラブル発生時に
365日24時間体制で昼夜を問わず迅速な対応を行っています。
今回は停電事故への対応について、当協会宮崎支部の平田尚幸がお伝えします。

地絡・短絡から停電事故へ

停電事故は一般的には、何らかの原因で地絡事故(大地に漏電)や短絡事故(ショート)が発生し、その過電流を遮断するために区分開閉器や遮断装置が強制的に電気を切って停電します。従って、その「何らかの原因」を突き止めることが、停電事故対応の重要ポイントです。
私が経験した事例をご紹介します。夜間、農業用ダムを管理するお客さまから「ダム管理事務所が停電している」との通報。直ちに現場に向かうのですが、私は通報を受けた瞬間に停電の原因が分かっていました。

停電事故への対応

ケーブルに水トリー現象が発生

じつは停電事故の1カ月半前、偶然私はこの現場の電気設備の年次定期点検を行なっており、高圧ケーブルの診断で絶縁抵抗値の低下を確認。高圧ケーブル自体は新しいので、被覆が経年劣化したわけではない。そこで、高圧ケーブルを地中に埋設している管路の状態を見るためにハンドホール((ます))を開けて中を見ると、高圧ケーブルが水につかっていました。ハンドホールは20年ほど前の設置でパッキンも劣化しています。高圧ケーブルの絶縁体に使われる素材には、水と電界の関係で小さな亀裂が発生して樹枝(tree)状に成長する「水トリー」現象が発生することがあるため、絶縁抵抗値の低下の原因はこれと判断。お客さまへ高圧ケーブル取り替えの必要性を説明し、工事予定日を決めました。その予定日の前日に停電事故が発生したのです。

停電事故への対応

絶縁耐力試験で安全を確認

現場に駆けつけて高圧ケーブルの絶縁抵抗値を測ると、果たして0MΩ。高圧ケーブルからの地絡が停電の原因です。あらかじめ連絡していた電気工事店によって、受電側の区分開閉器からキュービクルまで25mの高圧ケーブルを水に耐久性のある高圧ケーブルと取り替えます。冬の夜間に投光器で照らしながらの作業は2時間ほど。この施工にずっと立ち会うのも当協会の仕事です。そして施工が完了すると、当協会が新しい高圧ケーブルの絶縁耐力試験を実施します。直流絶縁耐力試験器を使って高圧ケーブルに高電圧を10分間かけ続け、試験器のメーターがぶれることなく高電圧を示していることをひたすら目視。高圧ケーブルが正常であることを確認して受電開始し、無事お客さまに引き渡しました。

停電事故への対応

受電設備の保守点検・更新が重要

この事例では、事前の定期点検で高圧ケーブルの不具合が見つかり、高圧ケーブルの取り替え工事日を決め、電気工事店も必要な25m高圧ケーブルを準備した上での停電事故だったので、速やかに復旧することができました。突発的な事故だったら、取り替え部品の調達などでもっと時間を要したかもしれません。
高圧受電設備は長期間使用すると経年劣化によって機能や性能が損なわれ、停電事故につながることがあるので、適切な時期に各機器を更新することが重要。保守・点検を担っている電気主任技術者の助言などを基に更新時期を決定してください。

更新時期の検討は
事故が起こる前に!

九州電気保安協会
宮崎支部
宮崎事業所
平田 尚幸
平田 尚幸
今日もどこかで

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