波及事故ゼロ

現場レポート

波及事故ゼロ

波及事故を絶対起こさないために

九州電気保安協会では、高圧受電設備の保安管理業務を通じてお客さまに「安全・安心」をお届けしていますが、その目標の一つは「波及事故ゼロ件」です。

広域に被害を及ぼす重大事故

波及事故とは、高圧受電設備などで起きた電気事故が原因で、電力会社の配電用変電所の遮断装置が切れて配電系統を停電させ、電気事故を起こした施設の近隣やその地域一帯まで停電させてしまう事故のことです。波及事故は自社の損失だけでなく、近隣にも停電による操業停止など社会的にも大きな影響を及ぼすため、設置者(波及事故発生者)の責任が問われ、場合によっては損害賠償を請求されることもある重大な事故です。

広域に被害を及ぼす重大事故

区分開閉器と地絡継電器

高圧受電設備で電気事故が発生しても、キュービクルの主遮断装置などが電路を遮断して回路を保護しますが、波及事故防止の最後の(とりで)となるのは、1号柱上の電気の引込点に設置された区分開閉器(PAS)です。一般に、地絡継電器付き高圧交流負荷開閉器8GR付きPAS)と呼ばれるものが多く設置されています。電柱の下の方に設置した地絡継電器は常に電気の流れを検知していて、異常な電流を検出した瞬間に区分開閉器を動かして送電線から電気を遮断します。ちなみに地絡継電器自体は交流100Vの制御電源を必要とし、その電源線をキュービクルから1号柱の地絡継電器まで施工しますが、制御電源用変圧器を内蔵した区分開閉器は、地絡継電器に制御電源を配電できます。また、雷害対策のため区分開閉器のそばには避雷器を設置しますが、避雷器内蔵タイプの区分開閉器もあります。

区分開閉器と地絡継電器

適切な定期点検を確実に

協会ではお客さまの高圧受電設備の定期点検を行っていますが、その際に波及事故を防ぐ区分開閉器の入念な点検も実施しています。月次点検では柱上に設置している区分開閉器を下から双眼鏡を使って外見点検。外箱の損傷、サビ、腐食(穴あき)がないか、碍子(がいし)の破損などがないかを確認します。地絡継電器は、蓋を開けて電源ランプが点灯しているか、自己診断表示ランプなどの点灯・消灯を確認し、外箱や内部に壊れやサビが発生していないか、虫などが侵入していないかなどをチェックします。そして年次点検(停電点検)では、区分開閉器と地絡継電器を連動させた動作試験を行います。このときに模擬的な電気事故を地絡継電器が感知して区分開閉器が作動するまでの時間を計測。電力会社と協議して定めた整定値よりも遅くなると、変電所の遮断装置が感知して波及事故になる可能性があります。

適切な定期点検を確実に

保守点検、そして更新が重要

波及事故防止のための定期点検はもう一か所。それは区分開閉器とキュービクルを結ぶ高圧ケーブル。もし高圧ケーブルに地絡事故が起こると、地絡継電器の電源が失われて波及事故になる場合があるので、ケーブルに損傷や亀裂はないか確認し、絶縁抵抗測定も行います。
区分開閉器は一度設置すれば永久に使えるわけではありません。機械である以上、経年劣化は避けられず、適切な時期に更新することが重要です。とりわけ屋外に設置された区分開閉器は経年劣化によりサビが発生したり、外気が侵入して内部で結露が発生したりして地絡事故を起こすおそれがあります。区分開閉器の更新推奨時期は屋外用で10年、屋内用で15年です。「まだ使えるから大丈夫」と思わないでください。波及事故を起こしてからでは遅いのです。ぜひ計画的に更新してください。

受電設備は
経年劣化するので
適切な時期に更新を!

九州電気保安協会
宮崎支部 小林事業所
森 達郎
森 達郎
今日もどこかで

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