現場レポート
異常を発見して電気事故を未然に防ぐ五感を働かせた点検
九州電気保安協会では、お客さまの電気設備を点検してトラブル発生の予防に努めています。その保安管理業務で必須とされるのが、視覚・聴覚・嗅覚・触覚といった五感を用いる点検。五感を働かせて異常を発見し、電気事故を未然に防いだ事例を、当協会福岡支部の鬼塚龍法がご紹介します。
保安管理の基本は外観点検
私たち検査員(電気主任技術者)は保安管理業務で検電器やクランプリークメーターなどの計測器を使いますが、電気設備の点検の基本となるのは「外観点検」です。外観点検とは電気設備の異音、異臭、損傷、汚損などの有無をはじめ、電線と他物との離隔距離の適否、機械器具・配線の取付け状態や過熱の有無を、おもに目視によって、場合によっては耳で聴いたり鼻で嗅いだり、手で触ったりして確認することをいいます。
異音から照明のトラブルを特定
スーパーマーケットのお客さまから「電気が使えない」と連絡が入ったので駆け付けたところ、ブレーカーが切れていました。その回路を使っている設備を一つ一つ調べていくと、バックヤードの屋外コンセントの損壊を発見。中を見ると内部が短絡していました。おそらく商品の配送作業でカートなどをぶつけたのではないかと思われ、今後はコンセントの前にコーンなどを置いて注意を促すよう提案しました。
またホテルでも同様の事例があります。漏電ブレーカーが切れたということで対応したところ、照明の回路にトラブルがあることが判明。どの照明が原因なのか特定に入るわけですが、「照明からジージーという異音が聞こえていた」とお客さまから証言をいただき、その照明を回路から外したら送電することができました。
絶縁体の発熱を触って確認
食品工場の分電盤を点検していた際、ブレーカーのプラスチックカバーが溶けて変色しており、電気の接触が悪いときに出るパチンという音もしました。そこでカバーを外してみると3つの端子の一つが焼損しており、絶縁の部分も触ってみると熱を帯びていました。焼損の原因は、端子のネジ締め不足のために通電時に抵抗ができて発熱したため。お客さまに話を聞くと、電気工事業者が増設したエアコンの線をその端子に繋いだとのことで、その際に締めが甘くなったようです。
その他、臭覚でトラブルを発見することもあります。屋外キュービクルの点検で扉を開けたときに異臭を感じる場合は、キュービクルの隙間から侵入した小動物が充電部に触れて感電し、短絡事故を起こしていることが推定できます。
ドアに挟まっていた電気コード
お客さまの施設に点検に伺った際、ドアの隙間に電気コードが通っているのを発見しました。よく見ると、ドアの頻繁な開け閉めのためにコードの被覆が剥がれ、中の線が剥き出しに。このまま放っておくと漏電、最終的には電気火災にも繋がります。これは一般家庭でもありがちです。電気コードがドアに挟まったり家具の下敷きになったりしていないか、確認してください。
電気設備はほとんど見た目に変化がないのでつい疎かにしがちですが、私たち検査員は必ずすべての機器と回路を一通り外観点検し、異常がないか確認しています。これからも、お客さまの安全で安心な暮らしに貢献していきたいと思います。
損壊し、内部が短絡した屋外コンセント。そのまま使い続けると、感電や漏電の恐れがあり危険です。屋外コンセントにカートなどをぶつけないよう、コンセントの前にコーンを置いて注意を促すなどの対策をしましょう。(右の写真はイメージ)
熱で溶けたブレーカーのカバー。中を開けると、左端の端子のネジが緩んで焼損しており、そこから発熱していることが分かりました。エアコン等、電気機器の設置工事で、機器をブレーカーの端子に接続する際は、ネジをしっかり締めるようにしましょう。
ドア付近で使っていた電気コード。剥がれていた外側の被覆(グレー)を開いて中を確認すると、内側の被覆(黒)まで剥がれて中の線が剥き出しになっていました。気付かずに使っていると漏電や電気火災を引き起こすかもしれません。
五感で異常を察知し電気事故を未然に防ぎます!