お客さま訪問記
うえはら株式会社 さま
玄界灘に浮かぶ国境の島・対馬には独特の食文化があります。対馬の農水産物を、消費者の立場に立って安心・安全・美味しいものに加工して販売する「うえはら株式会社」さまを訪問しました。
対馬の農水産物から郷土料理まで
対馬暖流とリマン海流が重なる対馬は日本屈指の豊かな漁場。アジ、アナゴ、サバ、イカ、ブリなどの旬の魚介は最高の旨味をもちます。一方、対馬の農産物といえば、肉厚で深い味と香りから「森のアワビ」といわれる「どんこ椎茸」です。うえはらではこれらの産物を干物や塩辛、佃煮などに加工し、対馬物産館や日本観光物産館、パパン(以上、同社直営店)、百貨店、ネット通販などで販売しています。また、対馬には「ろくべえ」「いりやき」といった郷土料理がありますが、それらもレトルト商品化しました。「対馬の伝統的な食材や料理を商品にすることで、対馬の食文化を全国に発信しています」と語るのは、同社の前身だった株式会社ウエハラの社長で、現在はうえはら株式会社の相談役をされている上原正行さん。「私はただの干物屋のオヤジ」と謙遜しますが、「生産者あってのうえはら」をモットーに、相談に乗ったり生産技術を指導したりして契約生産者たちを支える達人です。
究極のホールフード
同社には「食歴良品」というブランドがあります。これは一つ一つの商品の背景となる対馬の歴史・文化から、食材の生産者まで明確にしたもの。「21年前、百貨店に出店する際に考え出したブランド名です。人間には戸籍があるのに、なぜアジやヒジキに戸籍がないのか。それはおかしいと思った」と上原さん。2000年代初頭のBSE(牛海綿状脳症)問題を発端に食品のトレーサビリティが広まっていきましたが、食歴良品はその先駆けなのです。
2012年、同社は「骨まで食べる」という画期的な商品を開発しました。「学校給食用に魚の注文を受けたのですが、骨を取ってほしいとお願いされました。骨がない魚を食べることが子どもたちにとって良いことなのか?と疑問を持った私は、ならばいっそ骨ごと食べられる焼き魚を作ろうと思ったのです」と語る上原さん。完成した「骨まで食べるあじ開き」は、開封してそのまま頭から尻尾、骨まで美味しく食べられるので、生ゴミがまったく出ない究極の一物全食(ホールフード)です。
本の中に対馬の恵み
さらに、「骨まで食べる」の発展形として開発された商品が「FISH COOK BOOK」。ブック型のパッケージを開くと、その中に調理された対馬の魚介がセットされているのです。そのラインナップは、現在「骨まで食べる」シリーズを中心に焼き魚、煮魚、佃煮など22種。どれも添加物不使用で、特殊な含気包装のため常温で6か月保存できます。「むしろ日が経つほど熟成が進んで旨味が増します」と上原さん。本のように立てて並べて置くことができるので、非常食としてストックしておくのに便利。楽しいサプライズギフトとしても好評です。
同社の次なる取り組みを上原さんに伺いました。「気候変動や海流の変化で対馬では磯焼け現象が拡大し、藻食の魚介が不漁。その対策としていま生産者とタッグを組んでウニやトコブシの陸上養殖を実験しています」
最後に電気設備の保安管理についてご意見を伺いました。「対馬は台風の通り道で工場の停電が心配ですが、保安協会にすぐ対応してもらえるので、助かっていますよ」