お客さま訪問記
株式会社天文館むじゃき さま
「白熊」とは、ミルクシロップをかけたかき氷にフルーツを散りばめた甘味。鹿児島の食文化の一つである白熊を創り出し、その味を守り続ける株式会社天文館むじゃきさまを訪問しました。
夏の閑散対策として誕生した白熊
いまやコンビニでも並ぶほど全国的に知られるようになった白熊。その本家とされるのが、鹿児島一の繁華街・天文館にある天文館むじゃき本店です。むじゃきの白熊だけが持つ唯一無二の味わいは、どのようにして生まれたのか──同社の取締役社長室長・前田華代さんに伺いました。「ルーツは私の祖父が営んでいた大衆食堂『無邪気』。夏の閑散対策としてかき氷に練乳をかけて提供したのがきっかけです。お客さまには喜ばれたのですが、練乳では甘すぎたので2年かけて自家製ミルクを開発。昭和24年に白熊が誕生しました。彩りとしてチェリーとレーズン、アンゼリカをトッピング。それを上から見ると白熊の顔に見えたので、その名が付いたのです」
現在の白熊はたくさんのフルーツに寒天や小豆などが鮮やかに彩られ、器の底には十六寸(トロクスン)豆。この豆は白熊誕生からの変わらぬ定番です。
一子相伝のミルクシロップ
「店内でのお召し上がり用として現在は14種類の白熊を作っていますが、基本の白熊は作り方も味も創業時からずっと変えずに守っています」と前田さん。氷削機は50年以上前からのものを大切に使い、擦り手と呼ばれる職人が刃の目を細かく調整しながら泡雪のようなふわっとした氷に仕上げます。そして味の生命線はやはりミルクシロップ。「祖父が開発した自家製ミルクのレシピは門外不出。一子相伝で受け継がれています。ですから孫の私ですら知りません」と前田さん。「トッピングの豆や寒天も昔から手作り。常連のお客さまから『昔と味が変わったね』と言われないよう気をつけています」 店内での提供の他にテイクアウト用・宅配用のカップ白熊がありますが、こちらも機械で大量生産するのではなく、全体にミルクが浸透して長時間保存でもふわふわの食感が保てるように、氷の削り方を工夫しながら1個ずつ丁寧に作り上げます。
邪気のない心で
繁忙期には1日4,000食の白熊を売り上げる本店ですが、白熊以外のメニューも充実しています。1階はコーヒー各種や郷土色豊かな軽食を供するカフェ。2階は洋食レストランで、ソースやマヨネーズなどの調味料も自社で作る本格派です。「レストランもまた祖父が創業した大衆食堂を受け継いだもの。鹿児島産の素材をふんだんに使い、地産地消に努めています」と語る前田さんです。
白熊誕生から72年。100年企業への抱負を伺いました。「新型コロナが収束して天文館に賑わいが戻ったら、家族や友人と皆で楽しく料理を食べて、締めに大きな白熊を分け合って食べる──そんな思い出づくりをしてほしい。そのためにも、社名に込めた『むじゃき』──邪気のない心で変わらない味をこれからも守っていきます」
最後に、電気設備の保安管理についてご意見を伺いました。「鹿児島は台風県。大雨や強風で本店ビルのどこかがトラブルを起こして停電することもあります。私たちは慌てるばかりで原因がわからず、泣きつくように保安協会に連絡して来てもらっています。その度に全階を点検して原因を突き止めて対処してくれ、感謝しています」