現場レポート
電気を停めずに電気設備を診断する 無停電年次点検
毎年行っている電気設備の年次点検では、事業所全体の電気を停める「停電点検」を実施しています。
でも停電されると事業に支障が出る── そんなお客さまの声にお応えするのが「無停電年次点検」です。
その内容やメリットなどについて、当協会鹿児島支部の福田優文がご紹介します。
年に一度の停電年次点検を3年に一度に
電気事業法に基づき自家用電気工作物の設置者が行う電気設備の定期点検。年に一度はすべての電気を遮断した上で点検をする「停電年次点検」※が定められています。停電年次点検の場合、お客さまは停電前後の業務調整を行い、業務に支障がない休日や早朝に日時を設定して立ち会う必要があります。要件を満たす電気設備については、この停電年次点検を3年に一度へ延長し、その間の2年は電気を遮断しない「無停電年次点検」にすることによって、お客さまは通常通りの業務を続けることが可能になります。私が担当する地域でも無停電年次点検を導入しているお客さまは多く、とりわけ病院や大型量販店など社内ネットワークを活用しているお客さまに喜ばれています。
※エレベーターやOA機器、防犯カメラ等の機器を停止していただきますので、あらかじめ機器の操作方法についてご確認をお願いします。
無停電年次点検の特性
無停電年次点検は通電状態で点検を行うため、機器に直接手で触れることができません。そのため、特別な測定器を使用し点検を行います。絶縁抵抗測定にはコロナ放電チェッカーを用い、絶縁が劣化した際に発生するコロナ放電を探知し絶縁劣化診断を行います。また各機器内部の異常や端子部の接触不良などによる異常な温度上昇がないかを確認するため、赤外線放射温度計を使用します。保護継電器は正常稼動を判別する表示灯を目視し問題がないことを確認します。
温度の異常で接触不良を発見
無停電年次点検で異常を発見した事例を紹介します。お客さまは養鰻場。動力配線用遮断器を赤外線放射温度計で測定すると、通常は60℃程度の接続部が90℃に過熱しているのを発見。そこでお客さまに確認の上停電し、ボルト・ナットの交換を行いました。復電して計測すると80℃に。直ちに問題が発生する温度ではないことを確認して、日を改めて再度停電点検を行うと、動力配線用遮断器のバー表面部にやや凹凸があることが判明しました。そこでサンドペーパーによる研磨を実施して復電したところ、通常温度の60℃に下がったことが確認できました。無停電年次点検で異常を発見したことから、お客さまより「水車を使って養殖池に酸素を供給するなど、電気は鰻の生死に直結しているので、大きな事故に繋がらず本当に助かった」とのお言葉をいただきました。
今後も増えていく無停電年次点検
いまは電気が24時間使用できる前提で事業を行う時代なので、無停電年次点検はお客さまにとって非常にメリットがあり、これからも増えていくと思います。無停電年次点検の場合、通電状態で点検を行うため、原則2名以上で監視しながら作業を進める、充電回路とは十分な距離をとるなど、点検者は感電事故を起こさないように努めています。これからも、安全に点検を行い、お客さまの便利で安全な生活に貢献していきます。
絶縁抵抗が低下すると漏電し、大きな電気事故に繋がる恐れがあるため、しっかり測定を行います。
絶縁抵抗の劣化に注意!
合成樹脂製の絶縁物は、碍子と比べて湿気を吸収しやすくじんあい塵埃等の付着により、劣化が早まります。写真のように合成樹脂の表面が劣化している場合は、早期に機器を交換する必要があります。
電気設備の接続部・接触部の温度を測定し、接触不良やゆるみ等による過熱、部分放電に伴う発熱等の不具合を見つけます。
どうやって測るの?
赤外線放射温度計は非接触で電気設備等の温度を測ることができる便利な道具です。物体からの赤外線放射をセンサーにより温度に換算して測定します。
- 多くのお客さまにご利用いただいています!
お客さまに満足していただける点検・提案を目指します。